今回は、スズキ・メソードでお馴染みの才能教育研究会の事務局長の佐々木清文さんと事業部長の山田裕子さんに才能教育研究会が実施するイベントや全国に1200箇所以上あるスズキ・メソード音楽教室の状況についてお話しいただきました。(インタビュアー:イベントナガノ 芝)

芝:本日はよろしくおねがいします。まずは才能教育研究会について教えてください。
佐々木さん(以下、敬称略):元々は松本市内の有志の方が松本市内で音楽教育・文化を広めたいと活動している中で、鈴木鎮一を招聘した事がきっかけです。
松本への移住を機に子どもたちへのレッスンを活動の中心としたのが才能教育研究会の原型です。
1946年に松本音楽院を開設し、子どもたちの音楽教育を始めました。鈴木先生はヴァイオリニストでしたが、音楽ができる子を育てるのではなく、音楽を通じて「感性の豊かな子ども」を育てたい、人として立派な人を育てたいという信念のもと松本から長野県、日本全国へとスズキ・メソードが広がりました。
また、現会長の早野 龍五が子ども時代に参加した、子どもたち10人による演奏旅行(10チルドレンツアー)をアメリカで行い、それを機にアメリカ・全世界にスズキ・メソードが広がり、現在では40万人を超える生徒がスズキ・メソードで勉強しています。
芝:スズキ・メソード音楽教室はどのくらいありますか?
佐々木:800人の先生・1200~1300の教室が全国にあります。
芝:本会としての活動を教えてください。
佐々木:毎年6月に開催している先生方の研修会、毎年8月に開催する夏期学校や3年に一度開催しているグランドコンサート(全国大会)、課題曲の検定事業のほか不定期のコンサートや講演会があります。
また、全国の支部や教室ごとに多くのコンサートや発表会が開催されています。

芝:新型コロナによる自粛が始まってからの現状を教えてください。
佐々木:本会としての活動は3月の半ばくらいから8月の夏期学校までは中止が決まっています。
芝:夏期学校以降の話も具体的には決まっていない状況ですか?
佐々木:例年通りのことは計画していますが、流動的で様子を見ながら判断します。来年の3月にグランドコンサートの東京開催を予定していますが、これがこのままできるか心配しています。
芝:イベント開催には準備期間が必要ですよね。
佐々木:本番に向けて練習をしなければならない、誰が出るかの募集をしなければいけない、その前に案内をしなければならない、その前に実行委員会を開き何をするのかを話し合わなければいけない、その打ち合わせすら集まって満足にできない状況のため、先の話ではあるが判断が難しいです。
芝:一般の方からすると来年にはコロナ騒ぎが収まってかもしれないのに…と思われるかもですが、今動けないのもかなり厳しいですね。

芝:現在、スズキ・メソード音楽教室でのレッスンはやっておられるんですか?
佐々木:教室のある自治体の学校がお休みの間は対面レッスンを自粛してほしい、学校が始まったら再開してくださいという基本方針を出しています。ですので、今はほぼほぼ始まっています。
芝:教室に関しては平常運転に近い状態ですか?
山田さん(以下、敬称略):一対一の個人レッスンの他に月に一回、教室に所属している皆が集まってグループレッスンを行っていましたが、これに関しては密になる可能性が高いため6月いっぱいは自粛してくださいとお願いしています。
3月の時もそうでしたが、3月いっぱい、次は4月いっぱいと状況に合わせて延長しています。
佐々木:他にコンサートや発表会に向けたリハーサルも自粛してもらってます。ほぼほぼ戻ってきていますが、まだ100%ではないです。
芝:一対一ならzoomなどでも可能ですが、グループで音を合わせるのはタイムラグが出て難しいですよね。自粛期間中はオンラインレッスンが中心でしたか?
佐々木:基本的には全国の先生にそのようにお願いしていました。先生によって使うツールは違うのでしょうが、オンラインを中心に指導を続けてもらいました。
2番目「2つのヴァイオリンの為の協奏曲 ニ短調 BWV.1043より 第1楽章」の合奏にはイベントナガノ・レポート#2に登場いただいた嘉納雅彦さんがコントラバスで参加していますのでぜひチェックしてみてください。
youtube:スズキ・メソード新大阪「テレワークで合奏してみた」
芝:オンラインレッスンに関して良かった点、悪かった点は上がってきてますか?
佐々木:通信環境や接続環境による「音」の問題で苦労されたと聞いてます。
また、小さなお子さんにヴァイオリンの持ち方から教えるレッスンではどうしても近くに行きたい。オンラインで上とか下とか言っても伝わりにくい。そのような課題はあったようです。
ただ、本会の会長がHPで発信していますが、お子さんが長期のお休みになる、宿題があるとは言え生活のリズムが乱れがちになる中で、スズキ・メソードでは毎日の練習を大切にしており、この期間中はスズキの生徒は課題・目標に向かって毎日練習をすることによって生活のリズムが整えられたようです。
芝:そういう方針があると生活のメリハリがあっていいですね。
山田:課題は当然あるのですが、普段見えない角度から表情がわかったり、子どもたちも最初は戸惑っていたが2回目からはテレビ・パソコンに向かってレッスンを受ける事が楽しくなったりと、良かったという声も上がっています。
芝:子どもは大人にはない発想がありますし、若い子の方が使い方を覚えるのが早いですしね。
今後もオンラインでの授業も選択肢として行いますか?
佐々木:コロナの収束も見通せないので、オンラインも併用してのレッスンの方針になっています。
芝:話は少し変わりますが、先生の生活はできていますか?
佐々木:レッスンはオンラインを通じてある程度できていたので、レッスンが全く出来ない先生は少なかったと思います。
山田:チャレンジをしてみたけどうまく出来なかった先生も居られましたが、少数派だったと思います。
芝:足りない分は助成金を活用しながら…ですかね。
佐々木:本会でも全国の地域の情報を集め一覧にし「あなたの地域ではこういうのがあるから地域の窓口に相談してください」と伝えてきました。
様々な助成金があるが、どれも複雑で難しい。もう少し簡単になれば…
芝:難しいですが、普段まとめていれば普段の資料を提出するだけで良いので、今までちゃんと出来ていなかったのを直すきっかけになるかとも思います。かなり簡略化はされていますので、あとは頑張るしか…ですね。
芝:教室は今の所なんとか運営できていると思いますが、今後の不安などありますか?
佐々木:我々の活動は景気の影響を受けやすい。不景気になって所得が減ると子どもの習い事を制限する動きが出てきます。
今ピアノと学習塾をやっていたらピアノを休んで学習塾一本にしよう、一年生になったらヴァイオリン…と考えていたけど今は厳しいので少し遅らそうとして教室に入ってこないなど、我々はこれから影響が出ると考えています。
新規の入会希望者を集めるために体験イベントなどを行っていましたが、現在はそういうイベントもできない。本来であればこの数ヶ月で入会していたであろう生徒がいないため、これから半年後・一年後に響いてくると考えています。
芝:体験会はオンラインでは難しいですよね?
山田:オンラインでも「演奏しています。見てください」は出来るのですが、お子さんにとっては触って鳴らしてみる…というのが興味を引くポイントなので、それができないので難しいです。
佐々木:ただ、逆にオンラインでも生徒募集できる、オンラインでもある程度レッスンが成り立つとなれば、これをきっかけに新しい可能性がでるということもあるかと思います。苦しいからこそ、そういう事を考えたいです。
また、先生は全国に居ますが、先生がほとんど居ない地域もあります。スズキ・メソードを何かで知ったが教室がなくて入会できなかったお子さんをピックアップできるチャンスだし、課題だと思います。
芝:マイナスをプラスに考えるのは良いことですし、今それをやっていかなければいけない事だと思います。
三密を避けて体験会などを開催する…など、何か検討しているアイデアなどはありますか?
佐々木:楽器を使って何かをするイベントが中心のため、屋外での開催は難しいですね。雨でも快晴でもヴァイオリンを外で弾くのは難しい。ましてやピアノを持ち出すのは一苦労。
もともと防音室などで行う事も多いので、三密を避けてロビーで窓開けて…だと音の問題なども考えなければいけないので、色々制約がありますね。
芝:参考にしていただければと思いますが、深志高校が部活の騒音問題を地域住民と話し合った事をドキュメント化したものが第64回NHK杯全国高校放送コンテストのドキュメント部門で優勝しています。その動画を見ていただきたいのですが、こういう時節柄です。問題提議をしやすいことを逆手に取って住民と話し合って開催する…というのもありかと思います。

芝:才能教育会館には3年前に改修したホールがありますが、こちらの稼働状況はいかがですか?
佐々木:生徒の発表会が行えないので、現在の稼働率は高くありません。一般の方もご利用いただけますが、建物の構造上、不特定多数の利用には制限があります。
芝:では、来場者がリスト化できていたり、発表会で生徒さんと親御さん以外は来ないなど、誰が来たか把握できていればOKなんですね。
佐々木:そうです。
芝:今はコロナの関係でチケットがなかったり無料のイベントでも来場者を把握する必要がありますので、それを逆手に取ればすべての公演が開催可能ですね。
佐々木:そうですね。では積極的に使っていただきましょう。
芝:初めて来させていただいたのですが、新しくてきれいな会館ですよね。練習室も多いんですか?
佐々木:防音室は2室、あとは会議室や事務所関係の部屋が多いです。昨年高校の総文祭が開催された時は隣の市民芸術館に出演する高校生の控室などでも使用しました。
山田:よければロビーで練習していただいても結構です。制限などは特にありませんので、会場や練習場所をお探しの際もお声がけください。

芝:一般の方に知っていただきたいこと・伝えたいこと・お願いなどはありますか?
佐々木:今はPRできるイベントがないので、イベントに関しては特にありません。
芝:生徒さんの募集に関してはどうですか?体験会を通じて…がやっぱり多いんですか?
佐々木:ウチはどちらかというと「口コミ」が多いですね。
芝:ということは、すでに今年入会した新一年生もいるんですか?
佐々木:新型コロナの自粛期間も入会者はいます。人数は少ないのですが、まったくゼロというわけではないです。
山田:地域差もありますしね。感染者数の少ない地域ではある程度通常の対面レッスンも出来たかと思います。
佐々木:まだ体験会の開催が難しいのですが、今は消毒や換気などを十分注意してレッスンを再開しています。始めたいお子さんは是非お問い合わせいただいたり、見学に来てください。
芝:ただ、教室をやっていたかどうかもわかってない一般の方も多いと思います。ここはアピールしておきましょう(笑)
山田:あと、対面レッスンを再開しても保護者が不安を覚える場合があります。その際はオンラインレッスンを継続するなど、ご都合に合わせて、声を聞きながら臨機応変に対応いたします。
佐々木:とにかく、「うつさない」「うつらない」に注意しながら、レッスンをしていきたいと思います。
芝:あとはホールの利用促進ですね。
佐々木:キャパは260人、ホールの利用制限は特にありません。ピアノ2台+チェンバロも弾き放題で一時間2,000円でご利用いただけます。 商工会議所のセミナーなどでもご利用いただいておりますので、クラシックだけでなく様々なイベントでご利用いただけます。どうぞお問い合わせください。
山田:太鼓でご利用いただいた時は全館に響き渡りましたが(笑)
芝:三密を避けて、自治体のイベント開催ルールに則った上で、色んな公演・イベントがみたいですね。
色んな団体のご利用をお待ちしております!
才能教育研究会の佐々木さん・山田さん、今回は才能教育研究会やスズキ・メソードの教室の現状について色々お話しいただきありがとうございました。
イベントナガノでは今後も様々なイベント業界の方々にお話を伺い、現状や問題点の共有・ご理解をいただき、イベントが再開されるまで、されてからのバックアップを進めて行きたいと考えております。
また、今回の才能教育研究会の佐々木さん・山田さんを含めイベント関係者に別途質問させていただき、回答をイベントナガノ・レポートにて公開いたします。また、こういう業種の方の状況を知りたい・聞きたいというリクエストも受付しています。ご質問・リクエストはイベントナガノのお問い合わせフォームからお願いいたします