今回は、上土劇場の支配人であり、まつもと演劇連合会の会長でもある永高さんにお話を伺いました。
小劇場や地域劇団の状況、今後の展望や今どういうサポート・協力が必要かをインタビュー形式でレポートします。(インタビュアー:イベントナガノ 芝)

【2020/6/26 追記】クラウドファウンディング「【地域と共に歩む文化拠点】全国の小劇場の「再開」にご支援を」に上土劇場への応援の声が掲載されています。熱い想いをぜひチェックしてみてください。

応援の声(21) 新谷聡、伊藤利幸、運上裕年、神戸カナ、広田謙一【地域と共に歩む文化拠点】全国の小劇場の「再開」にご支援を

上土劇場の現状について
永高さん@上土劇場

芝:まずは上土劇場の新型コロナ自粛による影響を教えてください。

永高さん(以下、敬称略):上土劇場は3月からキャンセルが入ってきて、6月までは何も無く、7月最終週にTCアルプさんがするかどうかだが、それまではすべてキャンセル。3~7月の5カ月分ほどの売り上げがすっからかんという状況です。
しかもキャンセル料は一切取ってないんですよ。上土劇場はココだけで食べている訳ではないので金銭的に明日ヤバいという状況でもなかったですし、また事情が事情だけに劇団の人に負債を負わせるのもいかがなものかと考え、取りませんでした。

芝:今後のスケジュールはいかがでしょうか。

永高:今年は秋の演劇祭 (*1)も中止が決まったので9月までは厳しい状況。他にもOMF(セイジ・オザワ 松本フェスティバル)も中止となったためスクリーンコンサートもなくなりました。
緊急事態宣言が解除されたとはいえ、ここから立ち上げて劇場で何かをするとなると、稽古や販促を含め3ヶ月はかかり、今後も第2波等で9.10月に開催出来ない可能性も想定すると11.12月…。そうなると、今年は演劇は難しいかなと考えています。

芝:イベントナガノでも公演チケットのプレイガイド販売を行っていますが、お客様にとってもチケットを買うこともリスクなため、なかなか動かない(売れない)です。

永高:この状況ではお客さんも買ってくれないですよね。いくら「安心してください」と言ったところで買ってもらうのは難しいです。
今、確約できる情報が何もないため、コロナ騒ぎがじわじわと収まるのを待つしか…。
ただ、劇場としてもやるべきことはやります。客席を離す、換気をする、消毒をする、体温を測る、そういう事をすべてやっても、すぐに公演ができる状況ではないのが残念ですね。

芝:先ほどロビーに伺ったら何か作業をされていましたが?

永高:ロビーは上土劇場の本社の福祉事業部に貸し出しています。何かで使っていかないとね。
ただ、ホールは動かない(利用されない)ので、メンテナンスを行っています。いざ公演が再開できるようになったときのために、平台を塗ったり、幕を取り替えたりなどですね。

(*1) まつもと演劇祭は松本で毎年行われている県内外の劇団が市内複数の会場で行う、全国最大規模の地方演劇の祭典です。2018年に行われた第23回では10劇団が5会場で計40公演を実施しました。

全国の小劇場との連携
READY FOR:【地域と共に歩む文化拠点】全国の小劇場の「再開」にご支援を

芝:小劇場の全国的な状況について教えてください。

永高:全国の小劇場の運営者や経営者が集まっている全国小劇場ネットワークという団体があります。3年くらい前から集まり始め、国内のマーケットを独自で作り、経営基盤および文化的底上げを図る何かしら新しい動きをしようとしてきました。今年はいよいよ稼働しようとした矢先に今回のコロナ自粛が起きてしまい、最初の事業がクラウドファウンディングとなってしまいました。

最初の事業がコレなのはどうかと思いますが、現状すごく厳しくて緊急的な支援が必要な劇場もあり、またコロナ自粛が終わり再開する時に資金がないと何も動けないため、未来に向けた資金としてが最大の肝なわけです。

【地域と共に歩む文化拠点】全国の小劇場の「再開」にご支援を|READY FOR

地方劇団の状況について
上土劇場での舞台公演

芝:こういうご時世ですから思い切った構造改革が必要ですよね。劇団員の方は舞台に応じて参加となるため、契約書などがあれば雇用調整助成金などの対象にできるかもしれませんが、そういう事を行っている所も少ないようですし…

永高:そうです。去年の実績から今年はこのくらい…と言いにくい業界です。逆に去年全然だけど、今年は売り上げがある予定でした…と言っても真実味が欠ける話になっちゃう。

芝:今までは口約束だった事を明文化しないといけないですよね。雇用契約書と採用通知書などを作り、きちんと労働をしている、対価を支払うという約束が必要になりますね。

永高:経営や運営も含め、今までなぁなぁになっていた部分を明らかにする機会かもしれないですね。

永高:また、地方の劇団員は本業があり、演劇だけで食べていける人は少ないです。当然、本業が厳しい方もいるし、アルバイトが無くなって苦しくなっている人もいるが、本業で食べていけるから都会より地方の方がダメージは少なく再開できるのではないでしょうか。練習再開するよ!と言って集まりやすい状況ではあるので、地方の方が有利では…と思います。
まだまだ確定していないことが多いので、どこから手を付けて良いのか言いづらいが、練習場所としての公民館が制限付きではあるが使えるなど明るい部分もあります。

今皆さんにお願いしたいこと

芝:そういう状況ですから、今一番お願いしたいことというのはクラウドファウンディングでしょうか?

永高:そうですね。ご支援いただける方にはお願いしたいです。

芝:また、私からの提案なのですが、現状を正しく伝え、分かりやすく知っていただきたいですよね。

永高:全国小劇場ネットワークのクラウドファウンディングは READY FORでやっているのですが、このネットワークに参加している15劇場を一つにまとめた紹介動画が今日(5月25日)からyoutubeに公開されました。それが結構反響が良くて…やっぱり文字だけではなく、動いているものは訴求しやすいですね。

今後の劇場の活用について
上土劇場の舞台

芝:劇場の他の有効活用を考えていますか?たとえば、動画を撮影したいので貸していただきたいという方もいらっしゃるかと思いますが。

永高:舞台は空いているので、色んな方に是非とも使っていただきたいです。機材を持ち込んでいただくという前提はありますが、照明や音響は備え付けのものがあるため、録音・動画機器を用意してもらえたら全然OKです。

芝:うまくマッチングなどもできればいいですね。また、思い切った利用方法とか。

永高:そうですね。公演やイベント以外でも全然見当もつかない使い方でも声をかけてくれたら嬉しいですね。

芝:そういう情報が独り歩きして、思いも寄らない所から声がかかるといいですよね。セミナーや討論会のWEB配信とか…。

永高:PCR検査会場とかね(笑)

永高:本来は220人入るホールですが、ソーシャルディスタンスを保って飛び跳びだと40~50人の収容になるはずです。
松本市民しか利用できない、劇団員でないと利用できないということはありません。アフターコロナの劇場運用指針が決まるまでは、ぜひ色々な方に色々な用途で上土劇場を活用していただきたいです。活用していただく場合はそれに見合った割引などでサポートしたいと考えています。

永高さん、今回は小劇場・劇団について色々お話しいただきありがとうございました。

イベントナガノでは今後も様々なイベント業界の方々にお話を伺い、現状や問題点の共有・ご理解をいただき、イベントが再開されるまで、されてからのバックアップを進めて行きたいと考えております。
また、今回の永高さんを含めイベント関係者に別途質問させていただき、回答をイベントナガノ・レポートにて公開いたします。また、こういう業種の方の状況を知りたい・聞きたいというリクエストも受付しています。ご質問・リクエストはイベントナガノのお問い合わせフォームからお願いいたします